天文資料集

解説&観測記録

 

太陽系外惑星科学への招待

 

Pale Blue Dot  〜もうひとつの地球をもとめて〜

 

 宇宙には地球以外にも、生命が暮らす惑星があるのだろうか?

人間が昔から漠然と思いつづけてきた問いに、今は科学的に答えを出せる時代になってきた。太陽以外の恒星の周りを回る太陽系外惑星に、もう一つの地球を求めて、今、宇宙の探査が始まろうとしている。

 

1990年、2月14日。

NASAの惑星探査機、Voyager1号は、20年近い惑星探査の旅を終え、太陽系という「内海」から未知の「外洋」へ出ようとしていた。このとき、Voyagerは振り返って故郷の家族―太陽系の惑星たち―の写真を撮った。

   

 その写真には、金星から海王星までの、太陽系の7つの惑星が写っていた。太陽系の外から見れば、どの惑星も漆黒の宇宙に浮かぶ光の点にすぎない。しかし、この“点”たちのなかで、太陽付近の微かな青い点(Pale Blue Dot)―私たちが住む地球―は特別な“点”だ。この微かな青い点として写っている惑星には、他の惑星たちには無い多種多様な生命が暮らしているのだ。もしも、太陽以外の恒星のまわりに生命が暮らす惑星があれば、その惑星もやはり、このような微かな青い点として見えるはずではないだろうか。

1995年、私たちは初めて、太陽以外の恒星の周りにも惑星が回っていることを発見した。以来、現在までに200個近い太陽系外惑星が見つかっている。

 宇宙には確かに、太陽系以外にも惑星系(恒星とその惑星が形成する系)が存在する。でも私たちが本当に確かめてみたいことは、宇宙には地球以外にも生命が暮らす惑星が、本当にあるのかどうかではないだろうか。昔は「きっとそんな惑星があるに違いない。」と漠然と思うだけしかできなかったが、今はそれを確かめるための技術が、私達の手の中にある。漆黒の宇宙に浮かぶ、もうひとつのPale Blue Dotをどのように探していくのか、これからご紹介しよう。

 

最初の太陽系外惑星、ペガスス座51番星の惑星がみつかるまで

太陽系外惑星の間接観測

太陽系外惑星の直接観測

Pale Blue Dotに生命存在の可能性を探る

 

   

最初の太陽系外惑星、ペガスス座51番星の惑星がみつかるまで

誤報続きの系外惑星探し

太陽以外の恒星の周りをまわる惑星のことを「太陽系外惑星」または「系外惑星」という。夜空に輝く星は、皆太陽のような星だ。この、「太陽のような星」を「9個の惑星を持つ星」と考えれば、宇宙には一体いくつの惑星があることになるのだろう?しかも、太陽は何か特別な星ではなく、銀河系の片隅にある、目立たない、ごく普通の星なのだ。ならば、宇宙にはきっと数え切れないほどたくさんの惑星があるはずだ。

しかし、数え切れないほどあるはずの系外惑星の、最初の1個を見つけるまでには、当初の想像以上の時間がかかった。今、世界には「宇宙の果てを見る」望遠鏡が何台もあるが、「暗い」という点では宇宙の果ての銀河も、太陽近傍の恒星の周りにある惑星も同じである。ただ単に「暗い」というだけの問題ならば、「宇宙の果てを見る」望遠鏡の威力をもってすれば、10光年はなれた恒星の周りにある木星のような惑星の光を捉えることは可能なのである。しかしそれを不可能にしているのは、惑星であるがゆえに、すぐそばに明るい恒星があるという宿命だ。暗い惑星の光を捉えようと長い時間露出をかければ、画面はたちまち恒星の光で真っ白になってしまう。

系外惑星の光を直接捉えることは、今の地上からの観測では無理だ。今見つかっている180個の系外惑星は全て、間接的な方法で発見されている。恒星の周りを惑星が回っていると、惑星が及ぼす重力で中心の恒星はほんの少しだが規則的に揺れ動く。この恒星の揺れ動きから、周りに惑星がある、とわかるのだ。この方法では、重くて中心星に近いところを周っている惑星ほど見つかりやすくなる。1980年代には、太陽系以外の星の周りにある木星程度の惑星なら、見つけられるくらいの観測精度が実現していた。

しかし、観測精度はクリアしても、肝心の惑星はなかなか見つからなかった。「これぞ系外惑星」と認められるためには、ほかの誰が観測しても「これは確かに惑星だ」と思えるような観測データが撮れなければいけない。しかし、初期の「惑星発見!」のニュースはどれも、他のチームが観測すると惑星が存在する証拠がつかめない、という誤報ばかりが続いていた。さらに、1989年、観測の正確さには定評があるアメリカのジェフ・マーシーのチームから、太陽近傍の70個の恒星を4年間観測した結果、「惑星は検出できなかった。」という報告が出された。この分野の第一人者であるカナダのゴードン・ウォーカーも、1980年から12年間もの精密な観測の結果、太陽近傍の、太陽に似た21個の恒星の周りに、「木星質量程度の惑星は存在しない。」と発表した。

これだけ探してもみつからないなんて、もしかしたら太陽のように惑星を持つ恒星は非常に珍しい存在なのだろうか?宇宙には私たちの「仲間」はいないのだろうか…。

しかし、ウォーカーの論文が学界紙上に掲載された2ヵ月後、199510月に、人類初の真の惑星発見のニュースが飛び出すことになった。

 

ペガスス座51番星に惑星発見!

199510月6日、イタリアのフィレンツェで開催された学会で、スイスの観測チーム、ミッシェル・マイヨールとディディエ・ケロズがペガスス座51番星に惑星を発見した、と発表した。本来ならここで騒然となるはずの大発見だったのだが、この発表を聞いた研究者たちの反応は冷淡だった。惑星発見のニュースは今まで誤報ばかりだったのと、彼らが発見したという惑星が、惑星と言うにはあまりにも非常識な天体だったからだ。

これまで、人類が惑星系として知っていた唯一のサンプルは太陽系のみだった。だから、惑星の常識とは、太陽系の常識、ということになる。太陽系で、中心の星である太陽をふらつかせるほど重い惑星といえば木星である。ペガスス座51番星にみつかった惑星も、木星のような重たい惑星だ。太陽系の常識で言えば、木星のような惑星は中心の星から離れたところ―太陽の周りを一周するのに12年もかかるような―にあるはずだった。ところがペガスス座51番星の惑星は公転周期わずか4.2日、太陽系で言えば一番内側の水星よりもはるかに中心の星に近いところを回っている、木星のような巨大惑星だったのだ。

 

マイヨール(左)とケロズ(右) カナリア諸島、ラ・パルマ天文台にて。(マイヨール氏提供)

 

ペガスス座51番星。地球からの距離は50光年、5.5等星。太陽とよく似た恒星である。

 

光のドップラー変位から、ペガスス座51番星が4.2日の周期で近づいたり遠ざかったりしている様子が読み取れる。

木星質量の半分程度の惑星が4.2日の公転周期で周りを回っていれば、中心の恒星はそれを反映したドップラー偏移を見せる。

 

 「こんな非常識な惑星があるはずない。」だれもがそう思ってしまった。

 ところが、この発表から数日してからようやく、世界の科学者の間に衝撃が走ることになる。観測技術には定評のあるマーシーを皮切りに、他の惑星観測チームも次々とペガスス座51番星を観測し、そこに惑星があることを確信するようになったのだ。「この惑星は本物だ、われわれも独立に追試に成功した!」マイヨールたちの発表よりも、マーシーたち他の観測チームによる追試成功の報が世界を震撼させた。いままで、「惑星発見!」の発表があっても、だれも追試に成功したことがなかったのだ。ところが、ペガスス座51番星の惑星は、他の観測チームも次々と追試に成功した。恒星自身の脈動説や巨大黒点説など、様々な「非惑星説」も唱えられたが、それらはすでにマイヨールとケロズによって検証されており、(彼らがペガスス座51番星に惑星らしき天体を発見したのは1994年のことで、それから発表するまでの一年間、徹底的に惑星以外の可能性について調べていたのだ。)この星には惑星があると、誰もが信じるようになった。我々はついに、太陽以外の恒星に惑星を発見したのだ。

このペガスス座51番星の惑星の発見がきっかけとなって、その後1年と経たないうちに恒星の周りを数日で回るような惑星が次々と発見されるようになった。これまで、「惑星は無い」とされていた星たちの周りにも、実は惑星があったことが解った。このときまで惑星が発見できなかったのは、我々が「太陽系の常識は宇宙の常識」だと思い込んでいたことが原因だった。木星のような大きくて重たい惑星は、中心の星から離れたところにあるにちがいない、と思い込んでいたために、観測するときも一ヶ月に何回かの観測を何年も貯めてから解析する、というやり方だった。しかしこのやり方では、数日という短い周期で中心の星の周りをまわる惑星は炙り出せない。宇宙の惑星系の世界は、我々が想像した以上に多様だったのだ。

200633日現在、宇宙には181個の惑星が見つかっている。そのうちの18個の恒星には、2個以上の惑星が中心の星の周りをまわる惑星系であることが解っている。見つかった惑星は、ある程度重くないと見つけられないという制約のため、ほとんど全てが木星のような巨大ガス惑星である。そのうち25%ほどが、ペガスス座51番星の惑星のように中心の星の周りを数日で周るような惑星である。その表面の温度は1000度にもなるという、木星のような重さであっても木星とはかけはなれた灼熱の惑星たちを「ホット・ジュピター」と呼んでいる。また、太陽系の惑星たちがほとんど真円にちかい軌道を回っているのに対し、系外惑星の中には彗星のような楕円軌道をもつものも少なくない。このような楕円軌道惑星を「エキセントリック・ジュピター」と呼んでいる。

 太陽系は宇宙の常識ではなかったが、太陽以外の恒星も惑星を持っていることは確かになった。まだ、木星のような巨大惑星しか見つけられていないが、木星のような惑星があるなら、きっと地球のような惑星だってあるに違いない。あるなら、いつかきっと見つけられるはずである。漆黒の宇宙に浮かぶ、もうひとつの Pale Blue Dot を。

 

 

太陽系外惑星の間接観測

ドップラー法

  惑星は恒星の周りを回っている。より正確に言うと、惑星と恒星は共通の重心のまわりを回りあっている。惑星が恒星の周りを一周する周期と同期して、恒星も小さく円を描いて揺れ動いている。この恒星の揺れ動きを光のドップラー効果を使って測定し、その恒星の周りに惑星が存在することを割り出す、というのが系外惑星のドップラー法を用いた間接観測方法である。この方法なら、惑星が見えなくても、大気のゆらぎに阻まれて恒星の動きが正確にわからなくても、恒星からの光の波長の変化を調べることができれば惑星を発見することができる。現在発見されている系外惑星の95%がこの方法で発見されている。

 

トランジット法

 

系外惑星の中には、地球にいる我々から見たときに、その軌道がちょうど恒星の上を通るようなものがある。このとき、惑星はその大きさの分だけ恒星の表面を隠してしまうので、この恒星の明るさを測ってやると惑星が通過している時間だけ暗くなる現象が観測できる。この現象をトランジット(恒星面通過)という。このように、恒星の明るさが変化するという間接的な証拠によって系外惑星を発見する方法がトランジット法だ。惑星の軌道がちょうど恒星の上を通る、という確率が低いので、この方法で発見された系外惑星は5%ほどであるが、トランジットする系外惑星は我々に多くの情報を与えてくれる。

 ドップラー法で惑星を見つけても、その軌道が我々から見て傾いているため、正確な質量はわからない。ドップラー法で解るのはMsini(Mは惑星の質量、iは軌道傾斜角)だけである。ところが、トランジットする惑星なら軌道傾斜角iは約90°である。なので、トランジットする惑星の質量がドップラー法で解っていれば、惑星の正確な質量がわかる。また、トランジットしているときの恒星が暗くなる割合から、表面が隠される面積が解るので惑星の正確な大きさも解る。正確な質量と正確な大きさが解れば、正確な密度も解る。初めてトランジットが観測されたHD209458(惑星の公転周期3.5日)のデータから、我々が見つけた短い公転周期の系外惑星が確かに木星型惑星の密度であることが確認された。さらに、トランジットしているときの恒星からの光の中には、惑星の大気についての情報も含まれている。HD209458を分光観測することによって、この惑星の大気にナトリウムが含まれる(水星の大気にもナトリウムが含まれている)こともわかった。

 

 系外惑星のトランジットは口径10cm程の望遠鏡と市販の冷却CCDカメラがあれば観測できる。川口市立科学館でも、2005年8月19日に起こったHD209458のトランジットを観測した。

 

川口市立科学館で観測したHD209458のトランジット

     目的星HD209458と同じ視野内にあるHD209346を明るさを比較する星として選んだ。トランジットの開始予報時刻から、終了後1時間くらいまで露出時間30秒で連続撮像する。

      

冷却CCDカメラで撮像した画像

 

目的星と比較星の明るさの差を測り、10枚ごとに平均したものをプロットした。トランジットの開始は機器のトラブルで観測できなかったが、トランジット終了後、目的星が比較星に比べて明るくなるところが捕らえられた。

 

トランジットの光度変化のグラフ:観測点10個毎の平均値(誤差は0.01mag)をプロットしたもの

 

マイクロレンズ法

 

 

恒星に比べれば僅かだが、惑星も重力レンズ効果をもたらす。背景の星の像の様子から、レンズ源となっている恒星に惑星があることが解る。特に惑星を探す目的ではなく、見えない重力源を探していて偶然系外惑星を見つけてしまった例がある。他の方法で見つかる系外惑星が、数十光年程度の距離にあるものであるのに対して、マイクロレンズ法では数万光年も離れた系外惑星が見つかるのが特徴である。

 

今見つかっている系外惑星の特徴

発見されている系外惑星の多くは、重さが木星程度に大きく、そして中心の星に非常に近く公転しているものが多い。

中心の星に近くて(=公転周期が短い)重い惑星ほど見つけやすいので、偏りがあるが、太陽系外惑星の世界は我々の想像以上に多種多様である。

 

 

太陽系外惑星の直接観測

コロナグラフと干渉計

系外惑星は、惑星であるがゆえに、すぐそばに明るい恒星―その惑星にとっての太陽―があるという宿命だ。暗い惑星の光を捉えようと長い時間露出をかければ、画面はたちまち恒星の光で真っ白になってしまう。だが、惑星の光を直接捕らえることが全く不可能と言うわけではない。恒星の光がじゃまなのだから、恒星の光を消してしまえば、惑星の光だけが浮かび上がるはずである。恒星の光を消して、惑星の光を直接捕らえる方法がコロナグラフと干渉計である。

コロナグラフは、皆既日食のときに太陽の周りにコロナか浮かび上がって見えるように、マスクで明るい中心の星を隠してその周りにあるものを見ようとするものだ。

実際にすばる望遠鏡にコロナグラフを装着して、若い星の周りにあるガス円盤を観測することが行われている。中心のまぶしい恒星の光をマスクで隠すことによって、恒星を取り巻くガス円盤の姿が浮かび上がる。あと数千万年もすれば、それらの円盤の中から惑星たちが生まれてくるであろう。

 

 

一方、干渉計は数台の望遠鏡を用い、光の波長の光路差を利用して、中心の星からきた光を打ち消すことによって惑星からの光だけを取り出すやり方だ。

どちらの方法を利用するにしろ、系外惑星の光を捕らえるためにはこれらの機能をもった観測機器を地球大気のゆらぎの影響を受けない宇宙へ打ち上げる必要がある。世界中のチームが、系外惑星の直接観測を目指して機器の開発中だ。

 

国立天文台 田村元秀助教授

 

国立天文台で系外惑星の直接観測を目指して研究なさっている田村先生。プラネタリウムの番組にも出演していただいたが、出演映像撮影の合間に系外惑星研究についてのお話をうかがった。

 

#今見つかっている惑星系は太陽系と似ていないものが多いですが、これから太陽系に似た惑星系もたくさん見つかってくるのでしょうか?

「太陽近傍の恒星を何十個か調べても、10天文単位より外側にある巨大ガス惑星は見つかっていません。逆に、ホットジュピターは5%の恒星に見つかっています。どうやら、中心の星から離れたところにある巨大ガス惑星(太陽系のように“遠い木星”)は、ホットジュピター(“近い木星”)より少ないらしいのです。実は、我々の太陽系は宇宙の中では少数派だったといえるかもしれません。」

 

#田村先生のご専門である、コロナグラフを使った研究では、今どんな結果が出ていますか?

「現在、すばる望遠鏡にコロナグラフを組み合わせて、生まれたばかりの恒星の周りのガス円盤(将来、この中から惑星が生まれてくる)の様子を調べています。ガス円盤が観測できるまでは、円盤は一様なものだろうと予測されていたのですが、実際には渦巻状だったりムラがあったり、様々です。系外惑星が多種多様であるように、惑星が生まれる前のガス円盤も多種多様であることがわかってきました。」

 

#系外惑星研究の魅力は?

「この研究分野は、ステップを登っていけば必ず次のマイルストーンが見えてきます。そんなところに、この研究の魅力を感じています。」

 

アメリカ、ヨーロッパ諸国と日本の太陽系外惑星直接観測計画

 

COROTESA:ヨーロッパ宇宙機構) 2006年打上げ予定。

トランジット法によって、地球サイズの系外惑星を間接的に探す。

 

KeplerNASA:アメリカ航空宇宙局) 2008年打上げ予定。

トランジット法によって、地球サイズの系外惑星を間接的に探す。

 

SIMNASA) 2010年打上げ予定。

干渉計を使って木星サイズの系外惑星の直接観測に挑む。

 

DARWINESA) 2015年打上げ予定。

干渉計を使って木星サイズの系外惑星の直接観測に挑む。

 

TPFNASA) 2015年打上げ予定。

干渉計+コロナグラフで地球型惑星の直接観測を目指す。

(NASA)

 

JTPF(日本) 打上げの予定は未定。

(国立天文台)

 

Pale Blue Dotに生命存在の可能性を探る

 

光の点からどのように生命活動のサインを引き出すのか―スペクトル

 

地球型惑星の直接観測に成功したと言っても、その惑星に海や陸がある様子が写るわけではない。その姿はあくまで微かな青い点、Pale Blue Dotでしかない。しかし、見た目は点にすぎなくても、惑星からの光には惑星の大気の情報が含まれている。僅かな光から情報を取り出す方法がスペクトル観測(分光観測)だ。

 太陽の白色光をプリズムに通すと、赤から紫までの虹の色に分かれる。これが「分光(スペクトル)」である。白色光が虹の色に分かれてしまうのは、光の色の違いは波長の違いであり、波長によって屈折率が違うため、プリズムから出てきたとき、色によって場所がずれるためだ。分光した太陽の光を良く見てみると、中に黒い線が見える。物質は、その物質に特定の波長の光を吸収したり、逆に放出したりする性質があるが、太陽のスペクトル中の黒い線は、太陽の光がその表面から出て我々に到達するまでの間にあった物質によって吸収されてしまった波長の部分であり、吸収線と呼ばれている。太陽からの光が我々まで到達する間に通ってきたのは太陽の大気と地球の大気である。太陽のスペクトルを調べれば、太陽の大気と地球の大気に何が含まれているのかが解る。

太陽系の地球型惑星、金星、地球、火星の光を宇宙から見たときのスペクトルはどのように見えるだろうか。

それは吸収線のあるスペクトルとなり、惑星の表面で太陽の光を反射する際、大気によって光の一部が吸収される。宇宙から観測すると3惑星とも、二酸化炭素(CO2)の吸収線が見えるところから、大気に二酸化炭素が含まれていることが解る。また二酸化炭素の吸収線の幅を比べてみると、金星のほうが火星より広がっており、これは金星の大気の温度が火星の大気の温度よりも高いことを示している。スペクトルは、惑星の大気に含まれる物質だけではなく、大気の温度の情報まで与えてくれるのである。

地球のスペクトルには、金星や火星にはない細かな吸収線が見える。水とオゾンの吸収線だ。水は海や雲から、オゾンは植物が光合成をして作った酸素が上空で変化したものだ。水やオゾンの吸収線は、地球の生命を育む環境を反映しているのである。もし、太陽系外の地球型惑星のスペクトルに水やオゾンの吸収線を見つけることができれば、その惑星には海があり、植物のような生命体がいるかもしれない、と推測できるのだ。さらに、動物のような生命体がいるかどうかは、メタンの吸収線を探すことによって推測できる。メタンは、牛のような草食動物の「げっぷ」や「おなら」に多く含まれている。

 今から10年〜15年後、宇宙にもうひとつのPale Blue Dotを探す探査機が次々と打ち上げられる計画になっている。20年〜30年後、おそらく、今この文章を読んでいるあなたが生きているうちに、我々は本当にPale Blue Dot―生命を育む地球型惑星―を見つけているだろう。そのとき、我々地球の生命は、宇宙の中で孤独な存在ではなかったことが確認できるのだ。人間の、地球や生命や自分たち自身に対する考え方も、変わってくるかもしれない。

 

「宇宙には地球以外にも、生命が暮らす惑星があるのだろうか?」 

この問いは、「我々は何者なのか?どこから来て、どこへ行くのか?」という人間の根源的な問いに繋がっている。

Pale Blue Dotは、その問いの答えに繋がる糸口を私たちに教えてくれるはずだ。

誕生してから137億年の宇宙の中で、知的な生命体として生きることは、なんと楽しみの多いことだろうか。