天文資料集

テキスト集

●太陽についての解説

白色全面像観測望遠鏡

太陽

 太陽はそのほとんどが水素とヘリウムからなる高温のガス体です。表面温度は6000度、黒点部分では 4000度ほどあり、この温度差が明るさの違いとなって黒点を黒く見せています。私達がふつうに見る太陽面を光球といい、そこでは黒点が見られます。この 黒点は時間がたつと太陽上をゆっくりと移動していき、太陽が自転していることが分かります。自転周期は地球よりもゆっくりで、大体1ヶ月弱。東から現れた 黒点は半月ほどで西に沈んでいきます。

 

黒点には様々な形をしたものがあります。典型的な黒点は真中が黒く、その周りを薄暗い部分が取り囲んでいま す。この黒い部分を暗部、薄黒い部分を半暗部といい、その大きさや並び方で黒点はA〜H、J型という9つのタイプに分類されています。黒点は成長するにつ れ、A型B型というような単純な黒い点から、複雑で大きく広がるE型F型へと変化し、最期には整った円形をしたH型J型となって、そのうち消滅してしまい ます。黒点の寿命は長いものでも数ヶ月、成長せずすぐ衰えてしまうよう小さな黒点ではせいぜい1〜数日ぐらいしかありません。

磁場観測用望遠鏡 (青が黒点のS極、赤がN極)

 黒点は強い磁石の性質を持っています。小さな黒点の磁場の強さは1000ガウス程度ですが、大型の黒点に なると4000ガウスもの強い磁場を持ち、この磁場が太陽におこる色々な活動現象の引き金となっていると考えられています。砂鉄をばら撒いた紙の下に磁石 をあてると磁石のN極S極を結ぶ磁力線が分かります。黒点もペアになったものでは片方がN極、もう片方がS極というようになっていますが、面白いことに太 陽の北半球と南半球ではその組み合わせが逆で、今ごろは、北半球の黒点群ではペアになった西側の黒点はN極、東側の黒点はS極。これが南半球の黒点では西 側がS極、東側がN極と正反対になっています。

太陽分光器による紅炎のスペクトル

 太陽の光(白色光)をプリズムに通すと7色に分かれます。これをスペクトルといいます。スペクトルは光に 刻まれた太陽の指紋のようなもので、詳しく分析すると太陽表面がどんな状態になっているのか知ることができます。スペクトルには暗いスジ模様が何本も見ら れますが、これらは太陽にどんな元素があるのか、温度はどれくらいなのか、どんな動きをしているのか、黒点の磁場の強さはどれくらいあるのかなどを教えて くれます。元素は元素固有の波長の光を放出または吸収するため、どこにその光(輝線または吸収線)があるかによって個々の元素の有無が分かり、また吸収線 の形を見ることでその場所がどれぐらいの温度になっているかが分かり、また吸収線の強さを比べることで太陽にある元素の存在比が分かり、吸収線の分離の割 合を測る事で磁場の強さを求めることができるなどスペクトル観測は太陽を知るための有力な手段です。

6563拡大像観測用望遠鏡

 太陽に最も多い元素である水素原子、その出す光の一つ、 波長6563オングストロームのHアルファ線という赤い光だけを取り出して太陽を観測してみましょう。すると、白く輝く太陽面(=光球)上部の彩層を見る ことができます。Hアルファ線は白色光に比べると吸収されやすいために内部の光が外層まで届かず、その結果光球上部の彩層だけが見えてくるというわけで す。彩層には暗いすじ模様(ダークフィラメント)や、炎のように飛び出した紅炎(プロミネンス)が見られ、光球とはずいぶんと様子が違っています。また、 黒点の周囲には明るいプラージュと呼ばれる領域があります。このプラージュの明るさが爆発的に増加する現象がフレアで、フレアの発生は地球上にも大きな影 響を与えます。

 フレアのおこる原因は太陽磁場の振る舞いにあると考えら れています。黒点上部の磁力線が、プラズマガスの動きや新しい磁場の浮上などで不安定となりN極S極が接する境界部分でつなぎ変わるとき、そのときの余分 な磁場のエネルギーがフレアとして解消されるというのが今のシナリオです。大きなフレアが発生するとHアルファ光の強度が上がるだけでなく、X線や電波な どの強度も大きく変動します。また、それに伴って高エネルギー電子やプラズマが宇宙空間に放出され、数分から数日の間に地球に達します。それらがオーロラ や磁気嵐発生の引き金となり地球に大きな影響を及ぼすのです。太陽活動ピーク時にはフレアにより人工衛星が故障したり、また前回の活動では、カナダでフレ アの影響でおきた地電流の変動により発電所のコイルが焼ききれて停止、広範囲で停電が続いたこともあるなど、太陽の活動は私達の生活にも非常に大きな影響 を与えます。

 太陽活動は周期的に変動を繰り返しています。その活動の指標となるのが黒点数の変化です。上の図は 1750年から2004年までのおよそ250年分の黒点観測データをまとめたものです。この中に全部で23個の山があるので、平均すると約11年ごとに黒 点数が増えたり減ったりしていることが分かります。ワルドマイヤーという科学者は1755年に始まる太陽活動の山をサイクル1と決め、そこをスタートとし て順次番号を付けました。それに従うと現在の太陽活動は第24番目、サイクル24ということになります。現在進行中のサイクル24は、当初活動度が全く上がらず非常な低迷状態が続いていました。その後は徐々に活動度が上がり2014年にピークに達しましたがその値は近年にない低いものでした。ところで、各サイクルを比べるとサイクルごとに山が高くなったり低くなったりしています。最も高い山は19番目、サイクル19です。この とき太陽活動は非常に活発で、記録に残るような大きなフレアや大黒点が観測されました。またこれより昔、この太陽周期が70年間も消えてしまったというと きもありました。このように太陽は常に変化している天体なのです。

この図は川口で太陽観測が始まった1972年から現在までの黒点観測のデータをプロットしたものです。川口 での観測はサイクル20の下降期から始まり今まで38年間続けられていますが、この期間を通算すると徐々にピークの値が落ちている様子がわかります。ま た、各々の山はどれも2つのピークに分かれていますが、これは太陽の北半球側と南半球側の活動度の変化に時間的ずれが見られるためで、南北の非対称として 昔から知られているものです。ここ何年かの傾向としてはまず北半球側の活動度が先に上がり、それを南半球が追いかけるというパターンが続いています。とこ ろで、太陽活動の変化は黒点数の増減だけに見られるのでなく、太陽から放射される電波などあらゆる波長の電磁波でも起こります。特に波長数センチメートル 単位のマイクロ波は黒点数変化との相関がよく、これも太陽の活動度を調べるためのよい指標となります。

 太陽活動に応じて変化するのは、黒点数だけではありません。黒点の発生する場所も変わっていきます。この 図も川口での観測をもとに、縦軸に太陽面の緯度を、横軸に時間軸をとり、いつ頃、太陽面のどのあたりに黒点が発生したのかをプロットしたものです。まるで 蝶々が羽を広げたように見えることから蝶型図と呼ばれています。これと前に掲げた黒点活動周期の図とを比較してみましょう。すると、面白いことが分かりま す。それは、太陽の活動周期の始めには黒点は太陽の高緯度に出現し、活動が進み極大期の頃には中緯度に数多く現れるようになり、そして極小期に近づくにつ れて赤道へと移っていくということです。実に不思議な黒点の振る舞いですが、これも太陽磁場が関係しているからだと考えられています。

 このように、我々の生活に大きな影響を及ぼし、ダイナミックな活動を見せる太陽を観測することは非常に大 事なことです。太陽は平均的な星であり太陽を知ることはこの宇宙の多くの星を知ることにもつながるのです。科学館では晴れていれば毎日太陽に望遠鏡が向け られています。そして観測されたデータは常時公開され、太陽活動がどうなっているのかを広く皆さんに見ていただく役割も担っています。また、科学 館天文台での観測データはこのホームページ上でテキストファイルとして公開していますので、それらを利用すれば皆さんも今までお話してきたようなこ とを自分達でも調べることもできるようになるはずです。また、大気圏を離れて宇宙から太陽を詳しく観測するために、日本の太陽観測衛星ひのでを始め、アメリカのSDO、SOHO、STEREOほかたくさんの太陽観測衛星が常時太陽を監視しており、私たちにすばらしい太陽の映像を見せてくれるようになりました。これから太陽はますます身近で興味深い天体となっていくことでしょう。

  2004/04/21 第1稿 2016/10/01 部分改定