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●最近話題の天文話 2018年7月

○天文話 火星大接近

 7月31日、15年ぶりに火星が大接近する。
前回2003年の大接近は未曾有の大接近とややセンセーショナルにメディアで取り上げられ
日本各地の天文台では最接近当日には深夜まで見学者の長蛇の列ができたが、今回はどうだろう。
川口では7月28,29日そして最接近日の31日と天文台特別公開を行う予定だが
折角の機会なので、ここで火星について簡単に「おさらい」をしておこう。
  火星は太陽の周りを2年弱(687日≒1.88年)で公転している。
そのため地球は、火星をほぼ2年毎(2年2ヶ月)に内側から追い越すことになるが、
この横並びとなるときに火星と地球の距離は最も近く、これを最接近と言っている。
(軌道の真上、極側から見るとその配置は太陽〜地球〜火星という並びとなる。
これを衝と呼ぶが、この衝の前後に最接近日が来ることになる。)
  ここで、火星軌道は楕円形をしているため、同じ横並びになるときでも、
軌道上のどこで横並びになるかによって最接近時の距離が大きく違う。
2つの軌道間隔が狭い箇所で接近するときが大接近、広い箇所で接近するときを小接近、
その中間での接近を中接近とし、大接近は15年か17年ごとに起こることになる。
  時々、最接近日しか火星が近づかないと誤解されることがあるが、
この接近時は、地球と火星がともに軌道上を並走する形となっているので、
最接近の前後しばらくは火星〜地球間の距離はあまり変わらず、見え方もほとんど変わらない。
ということで考えると、前回2003年の大接近当日に列を作る必要などあまり無かったわけである。
今回はあせらず、夏休みの間に見られればOKというぐらいのスタンスでいるのがいいだろう。

 

○大接近・小接近
  火星と地球の軌道を較べて見ると
           火星       地球                  
  平均距離(〜太陽)2億2794万キロ   1億4960万キロ
           1.5237AU     1AU
  公転周期     686.98日     365.256日
  離心率e      0.0934      0.0167
  近日点黄経    336.0602     102.9373
  昇交点黄経    49.5658    0.0000

 まずは接近(横並び)の頻度だが、これは火星と地球の会合周期に他ならないので、
2天体の公転周期の差分から会合周期を求めると779.9日=2年と50日ほどとなり、
こうして2年2ヶ月毎に火星と地球は接近するということがわかる。
  次に大接近、小接近についてだが、火星の離心率は地球より6倍弱大きく、より扁平となっている。
離心率eは楕円の長径短径それぞれ二乗した値の差分の平方根を、長径で除したものと定義されている。
近日点、遠日点距離はそれぞれ、1から離心率を減じた値に平均距離を乗じたものと
1と離心率を加えた値に平均距離を乗じたものとなり、結果、近日点距離は1.3814AU=2億665万キロ、
遠日点距離は1.6660AU=2億4924万キロとなる。ここで、地球軌道を円と看做せば(1.0AUとして)
近日点での地球〜火星間距離は0.3814AU≒5700万キロ、遠日点では0.6660AU≒1億キロとなり
大接近と小接近ではほぼ2倍近くも大きさが違って見えるということになる。

 

○大接近の間隔
  地球の公転周期は365.256日。火星は686.98日。そして会合周期は779.9日。この3つから

地球   365.256×15周=5478.84
火星   686.98×08周 =5495.84
会合周期 779.9×07周 =5459.3

地球   365.256×17周=6209.352
火星   686.98×09周 =6182.82
会合周期 779.9×08周 =6239.2

と、15年・17年ごとに3つが同じような値となり、これが大接近の間隔となる。
ただし、同じような値≠同じ値、ではないので、その差分から大接近の日にちは前後にずれ
15年ごとの大接近の場合、7回目の会合のとき地球は15周しておらずその分最接近日は早くなり、
17年ごとの大接近の場合、8回目の会合のとき地球は17周を越しておりその分最接近日は遅くなり、
ということとなる。実際に2003年の最接近日8月27日と比べると、
今回の(15年後)最接近日は7月31日と早まり、次回の(18年後)最接近日は9月11日と遅くなる。

 

○大接近を較べる
今回あわせ前後3回の大接近の数字を比べてみよう。

 2003年大接近 最接近日  8月27日   
         最接近距離 5576万キロ
         視直径   25.03秒
  2018年大接近 最接近日  7月31日
         最接近距離 5759万キロ   
         視直径   24,3秒
  2035年大接近 最接近日  9月11日
         最接近距離 5691万キロ
         視直径   24.6秒

最接近距離は、今回は2003年に較べ183万キロ遠い。次回も同様に115万キロ遠い。
2003年レベルの大接近となるのは、2208年(5577万キロ)ということで、
これを見ると並びたくなった気持ちは分かる。
だが火星の見え方で考えると、たとえば直径25センチと24センチの火星を並べて見た程度の違い。
これを大きな違いと見るかどうかだが、別々に見たら差に気が付かないかもしれない。
  ところで、どんな条件のときの大接近がいいのか?
これは当然、火星が近日点を通過するときに最接近するという場合だろう。
火星の近日点黄経(日心黄道座標)は336度ほどとなっている。
これは星座ではみずがめ座の方向となり、8月末の真夜中ごろに南中する。
ということで、最接近となる日にちが8月末ごろというケースが好条件のときとなる。
前回2003年は最接近日8月27日、これとならぶ2208年大接近では最接近日は8月24日、
また2003年よりさらに好条件の2287年の大接近も8月29日というようになっていて、
8月末に最接近となるときは、非常に条件のよい大接近の年と考えておけばよい。

 

○火星の季節
  火星の自転軸の傾きは25.49度と地球と大差なく、地球のような四季がある。
今回の接近時、火星の季節はどうなっているのだろう。
それを示すのがLs、火星基準の黄道座標で、Ls=0度が春分、90度が夏至、180度が秋分、270度が冬至である。
ここで、火星が近日点にいるときの黄経は336度ほどとなっていた。
この近日点に火星がいるときの(つまり最高条件での大接近のころ)Lsは251度となっている。
これは上記のとおり秋分と冬至の間、冬至寄りの位置で、北半球では秋の終わりから冬に向かう途上、
南半球では春の終わりから夏に向かうころにあたる。
  で、今回は最接近日が8月末ではなく7月31日なので、Lsは251度には達しておらず、
位置換算で大体221度付近となり、季節としてはちょうど秋分と冬至の間ということになっている。
また、このとき地球から見た火星の自転軸の視線方向の傾きはー11度と火星は上向きの状態。
つまり南極側をこちらに向け見せる格好となっている。
 
○最接近と火星の季節
  おしまいに補足。2年2ヵ月ごとの火星接近、このときの火星の季節は何か?
これは最接近の日さえ分かれば簡単に目安をつけることができる。
それは、地球と火星とが横並びとなったときの火星の季節は、
地球より一つ先に進んでいるという関係である。
ここで近日点に火星がいるときのLsは251度、このときの黄経は336度だった。
ここで火星からみた春分点、そして太陽から見た春分点はともにLs0、黄経0なので
両者の差85度は、火星から見た春分点と、太陽から見た春分点との角度のズレを表す。
(日心黄経ーLs=85)
つまり、日心黄道座標による春分点の位置は火星より85度大きく、
したがってLs 0、つまり火星が春分点に達した後、85度ぶんだけ動いた時点で地球が春分点に達し、
このとき火星の季節はほぼ夏至の時点となっている、したがって1シーズン先ということになる。

 

○何が見えるか
  大接近時の火星は表面模様が見やすい。
今回の大接近では上記のように火星は南極側を地球に向け
そして火星の季節はこの南半球側では春分から夏至に向かうところで
縮小中の南極冠を見ることになる。あとの模様は月のようにははっきり見えずぼんやりとしている。、
それでも天文台における観測では、屈折望遠鏡は画像が安定しているので平均的によく見え
反射望遠鏡は気流の影響で画像が安定しないが、制止した瞬間おどろくほど細かく模様が見えるなど
実際に見る火星の様子はTVなどでは決して味わえないものがある。
今年の夏は、大接近中の火星を満喫しよう。