天文FAQ

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●最近話題の天文話 1月

●ボイジャーの旅

 新しい年の始まりである。なので少し未来っぽい話題を・・。
昨年末、NASAは惑星探査機ボイジャー2号が11月05日に太陽圏を離脱したと発表した。
〜太陽圏とは太陽から吹き出す高速の荷電粒子の流れ=太陽風の届く範囲〜、
その距離は約177億キロ、地球〜太陽間の100倍以上あり、光でさえ伝わるのに16時間かかる。
太陽圏は彗星のような形状で、太陽の進行方向と逆側に長くたなびいており、
ボイジャーはその頭部を抜け出たという形になる。だがそこではボイジャーの旅が終わらない。
十分とは言えないもののまだボイジャーの機能は生きている。
進む先にはオールトの雲と呼ばれる微天体の巣(長周期彗星のもと)があると考えられており、
そこに達するまでまだ300年、抜けるのには3万年はかかるという。
それでも隣の星にすら達することはない。星の世界は実に広大だ。
  打ち上げから42年、ボイジャーはNASAの宇宙探査ミッションでは最長のものとなった。
だが太陽から遠く離れるため2030年ごろには太陽位置の検出が困難となり、
地球との交信ができなくなると見られており、以降ボイジャーは長い一人旅を続けることになる。
今回は、そんなボイジャーの旅の道筋を追ってみよう。

○グランドツアー
  ・ボイジャー1号 打ち上げ   1977年9月5日
           木星最接近  1979年3月5日
           土星最接近  1980年11月12日
           太陽圏離脱  2012年   
 
  ・ボイジャー2号 打ち上げ   1977年8月20日
           木星最接近  1979年7月9日
           土星最接近  1981年8月25日
           天王星最接近 1986年1月24日
           海王星最接近 1989年8月25日
           太陽圏離脱  2018年11月5日

 上に記した通りボイジャーは、1号・2号と双子の兄弟機だ。
打ち上げは2号が先行したが、木星に着いたのは1号が先で、こちらを1号と呼んでいる。
1号の太陽圏離脱は2012年と6年早く、この時も、人類の作った探査機が
初めて太陽系を抜けたと非常に話題になった。
(・・・ボイジャーの探査で一番印象に残っているのはむしろ土星最接近のときだ。
このときは衛星中継をする〜当時は珍しかった〜ということで、
送られてくる土星画像をTVにかじりついて見ていた記憶がある。)
  当初の計画ではボイジャーの運用期間は5年で、木星・土星の探査を行うというものだったが、
(コンセプト段階での名称MJS〜Mariner-Jupiter-Saturn)
これが無事に成功を収めたため、予算が追加され、さらに外界を目指すことになる。
それを可能にしたのは、(当時のNASAスタッフの先見の明ともいうべき)探査機の仕様で
木星の強大な磁気圏への防御対策・自律したコンピュータシステム・2020年まで電源供給できる
原子力電池・数十年分もの姿勢制御用推進剤・プラズマ観測装置、荷電粒子装置、磁力計などの
各種観測機器で、これらがなかったらボイジャーの旅はここまで長くは続けられなかったし
太陽圏から抜けたことも分からなかったはずである。
  ところで、ボイジャー2号の訪れた惑星を見ると太陽系の外惑星4つ全部である。
現在は、たとえば土星探査機カッシーニとか木星探査機ジュノー等々
個々の惑星を探査するというパターンが主なのに、どうして4つだったのだろうか?
答えはボイジャーの打ち上げられたタイミングと、そのコースにある。
実はこの時、外惑星探査の千載一遇のチャンスが巡ってきていたのだ。
惑星直列という言葉を聞いたことがあると思うが(文字どおり惑星が軌道上で1列に並ぶ)
この時期、探査機があるコースをとって飛び立てば(惑星が一列に並んでいるかのように)
これらの惑星を順番に巡ることができるという配置を、地球を含め各惑星がとっていたからだ。
〜もちろん一直線に並んでいたわけではない〜
ボイジャーは惑星がこの特別な配列となるときをねらい(175年に一度のチャンス)、
定められたあるコースをとって飛行することで、このグランドツアーを可能にしたのだ。

○グランドツアー
  地球から木星などの外惑星に行くためには太陽の強い重力に逆らって飛行することになり
探査機の運用に長い時間と膨大な燃料とが必要になる。
従って60年代の技術では、外惑星の探査は困難なものと受け止められており、
それを回避する効率的な飛行方法が求められていた。
〜これは60年代の太陽系探査の歴史を見れば一目瞭然で、探査機が送られたのは月や金星、
そして火星という地球から近い天体に限られていた〜
この課題の解決に大きな役割を果たしたのは2名の若い研究者だった。
その一人がマイケルミノビッチ(Michael Minovitch)である。
数学を専門とした彼は、大学を卒業して間もない1961年にジェット推進研究所(JPL)で、
当時世界最高の性能を誇る計算機IBM7090を使い、3体問題と称される問題の解法に挑戦。
〜例えば太陽と惑星からの重力が小さな探査機の運動にどのように働くかを求める〜
そして、惑星の重力を利用することで探査機のコースや速度を変える
新しい宇宙飛行の手法(フライバイ・スイングバイなどという)を考案、発表した。
これは公転する惑星から運動のエネルギーをもらい(探査機を振り回すようなイメージ)、
ほとんど燃料を使うことなく探査機の速度を上げることを可能とするもので、
これによりこれまでは困難だった外惑星探査への道が開かれることになったのである。
〜この航法はマリナー10号(1973年)、パイオニア10、11号(1972〜73年)で採用〜、
もう一人は、グランドツアーの経路を求めたJPLのゲーリーフランドロ(Gary Flandro)だ。
NASAが外惑星探査を目的としてグランドツアー計画に取り組み始めた1964年、
木星・土星・天王星・海王星が1970年代後半に太陽の特定方向側に揃うというときを狙い、
この配列を利用して一機の探査機で全部の惑星を回れないかという課題を受け、
フランドロはその可能性を探るためにコンピュータシミュレーションを繰り返した。
そして算出された膨大なシミュレーションの中の一つが、ボイジャーの飛行コース
グランドツアーだった。
  さて、このような研究者たちの努力の結果、ボイジャーは1977年に外惑星への
長い旅のスタートを切ることになる。このときのボイジャーの速度は、
太陽系を脱するのに必要な速度(およそ秒速17キロ)には勿論達していなかった。
それが地球・木星・土星のフライバイをへる度に段階的に加速し、
それが今回の太陽圏離脱につながったということになる。

○太陽系の範囲
  太陽系の広がりは一体どこまでと考えられるのだろう。
チリやガスが集積してできた原始惑星系円盤から太陽や惑星ができたという
太陽系生成の標準的な考え方からすると、
その原始惑星系円盤の大きさが太陽系の広がりと考えるのが順当だろう。
標準理論ではそれは100天文単位(1天文単位=地球太陽間距離)ほどとされているが、
これは現在の太陽系天体(ガスやチリ含め)の質量やその広がりから見積もられたもので
必ずしも定まっているとは言えない。現状はどうなっているのか見てみよう。
*惑星ゾーン(正式名称ではないが)
  水星から海王星がある範囲〜30天文単位
*エッジワース・カイパーベルト
  海王星より外側、冥王星なども含む準惑星や小天体が分布 30〜55天文単位
*太陽圏(ヘリオスフィア)
  前記、太陽風の届く範囲 ボイジャーの位置から考えると100天文単位以上
  ただしこのヘリオスフィアは太陽活動によりその範囲が増減する。
*ヘリオポーズ
  太陽圏と恒星空間との境界 恒星間風と太陽風とが入り交じる領域
*オールトの雲
  前記、超周期彗星の供給源と考えられている領域 5万〜10万天文単位
  1950 年にオールトが長周期彗星の(惑星からの影響を受ける前の)初期軌道を調べ、
  太陽から5万〜10万天文単位の距離に彗星のもととなる球殻状領域があるとした。
  このオールトの雲は、太陽系内にある微惑星が他の大惑星により軌道が乱され
  太陽系のはるか遠方にはじきだされたものと考えられている。
以上のように見るとオールトの雲は太陽の支配する領域とは言い難い事がわかる。
重力作用だけでなく、太陽磁場による磁気圏もあわせてみていくと
やはり太陽圏を太陽系の範囲とするのが良さそうである。
 
○おわりに
Space,The final frontier.
These are the voyages of the Starship, Enterprise.
Its 5 year mission to explore strange new worlds,to seek out new life
and new civilizations,
to boldly go where no man has gone before.  
***テレビ映画 スタートレック(邦題 宇宙大作戦)冒頭のナレーションから***
これは数十年も前のSFテレビ映画スタートレックの冒頭に流れるナレーション。
時代設定は22〜3世紀?
それが映画化された第1作には何とボイジャーが登場する。
宇宙空間を漂っていたボイジャーが機械文明体に取り込まれ、その創造者を求め
宇宙を旅し宇宙船USSエンタープライズ号と遭遇するというような内容だった。
もしもボイジャー2号が仮に太陽の隣の星に行けたとしても、約8万年はかかる。
宇宙は広大、文明の継続時間はどれくらい、そんなもろもろを考慮すると
ボイジャーがほかの生命に遭遇する確率はほとんど皆無に近いだろう。
それでもボイジャーには人類のメッセージを記録したレコードが託されている。
いつか、どこかで、誰かがそのメッセージを開くことを期待して・・・