天文FAQ

天文トピックス

●最近話題の天文話 2018年8月

○天文話 サンプルリターン  HAYABUSA2 & OSIRIS-REx
  日本の小惑星探査機はやぶさ2が6月27日、小惑星Ryugu(1999JU3)に到達、
まるでそろばん玉のようなRyuguの姿を届けてくれた。
Ryuguへの着陸・サンプル採取などの本格探査はまだこれからだが、
実はこの時期、NASAの小惑星探査機オシリス・レックスもBennuという小惑星に向かっており
今年の12月には到達する予定で、はやぶさ2同様のサンプルリターンを目指している。
JAXA、NASA互いに協力し計画は進められているが、研究となると強力なライバルでもある。
先代はやぶさで積んだ経験を活かせるJAXAか、マンパワーも豊富なNASAか、
両チームから今後どのような成果が出されてくるのか注目したい。
計画自体は、はやぶさ2が半年ほど先行し進められているものの、ミッションの山場はまだ先。
予定通りサンプルが採取できたか否かが成功のカギと言えるだろう。
Ryugu、BennuともにItokawa(先代ハヤブサが探査した)よりも始原的な天体とされており、
サンプル採取は、太陽系の歴史を解き明かす上で大きな手がかりとなると期待されている。
今月はこの2つの探査計画について見ていくこととしよう。
(以下、JAXAはやぶさ2サイト、NASAオシリス・レックスサイトによる)
○タイムテーブル 
*HAYABUSA2
  打ち上げ   2014年12月03日
  Rugu到着   2018年06月27日
  地表探査   03ヶ月程度       マッピング・着陸地点選定
  試料採取   2018年09月〜10月予定 着陸機+ローバー(1〜2機)の放出とサンプル採取
                     *サンプラーホーンによる採取
           2019年02月予定    2度目のサンプル採取
           2019年03月〜05月予定 インパクタ打ち込みとサンプル採取
          2019年07月       ローバー放出
  軌道離脱   2019年11月〜12月
  帰還     2020年後半予定
*OSIRIS-REx
  打ち上げ   2016年09月08日
  Bennu到着   2018年12月03日予定
  地表探査   1年半程度 詳細なマッピング・着陸地点選定
  試料採取           窒素ガス噴射し最少でも60gほどのサンプル採取の予定
                 *サンプルアームによる採取は5秒
  軌道離脱   2021年前半       
  帰還      2023年09月24日予定

○HAYABUSA2の探査
*はやぶさ2は、実証試験機という位置づけだった先代はやぶさとほぼ同等サイズ。
(探査機本体:1mX1.6mX1.25m、重さ609kg〜燃料含、はやぶさは510kg。)
  大きさはざっと見で軽自動車の半分ほど、探査機としては小型。
  主推進は、化学ロケットの10倍も効率の良いイオンエンジン(改良型)。
  搭載されている主な観測機器は下記の通り
   小型ローバ(MINERVA-II)前回は失敗したもの。
                小惑星に着陸。ホップして移動しながら表面の観測を行う。
                数日間運用。3台搭載。
   小型着陸機(MASCOT)  独仏の開発。1回のみ15時間の運用。
               小惑星に着陸。赤外分光計、磁力計、熱放射形、カメラで表土を分析する。  
   サンプル採取装置 弾丸を打ち込み飛び散った表面物質を採取。
   衝突装置      重さ2kgの銅を打ち出しクレーターを作り内部物質を採取。
   分離カメラ      衝突装置によってクレーターが形成される様子を撮影する。
   モニタカメラ      サンプラーホーンの先端を撮影する。
  先代はやぶさはサンプル採取装置がうまく機能せず、微量のサンプルしか採取できなかったため
サンプラーホーン先端の内側に折返しをつけるなど採取がしやすいように改良されている。
  注目すべきなのが衝突装置による小惑星内部の物質採取だ。
小惑星の表面は太陽風や微小隕石の衝突に晒され、微小な鉄粒子などが付着し赤っぽくなる。
これを宇宙風化といい、風化されていない内部の採取は太陽系初期の様子を探るには不可欠。
衝突でできたクレータの観測も、小惑星物質の変化過程を探る手がかりとなるだろう。
次が着陸機とローバーによる地表探査。
  マスコットは、赤外分光顕微鏡を搭載、鉱物の種類・水や有機物、温度測定、広域磁場を調べる。
小惑星は地球上の水や有機物の供給源と考えられ、中でも始原的な小惑星とされるRyugu探査は
惑星の生成過程を探るヒントにもなるだろう。
一連の観測終了後、マスコットは1回ジャンプし〜最大200mの跳躍力があるという〜別の場所に移動、
そこで同様の観測を行うことになっている。
  ミネルバ2は、宇宙研が製作したMINERVA-U1、東北大・大阪大・東京電機大・東京理科大などの
大学チームが製作したMINERVA-U2とがある。ここから計3台のローバーを投下、地表の近接撮影を行う。
ローバーの移動方法がユニークで、DCモーターの回転で生じる逆方向のトルクで地面を蹴る。
小惑星上を飛び跳ねながら移動するというわけだ。これは重力の弱い小惑星上での移動方法の検証という
工学実験的な目的も持っているとのことだ。

○OSIRIS-RExの探査(Origins, Spectral Interpretation, Resource Identification, Security,
           Regolith Explorer)
*はやぶさ2に比べ、ほぼ2倍の大きさ。
(探査機本体:2.43mX2.43mX3.15m。重さ880kg2110kg〜燃料含む)
  まさに軽自動車ほどのサイズで、重さははやぶさの4倍近くにもなる。
  主推進ははやぶさ同様のSEP(Solar Electric Propulsion)ソーラー電力推進〜
  ソーラー・パネルからの電力でキセノンガスなどの推進剤をイオン化して推力とする。
  搭載されている主な観測機器は次の通り
   OCAMs PolyCam   8インチ望遠カメラ
   MapCam       4色カラー撮影
  Samcam       サンプル採取記録
   OLA          レーザー高度計
   OTES 赤外スペクトル 鉱物固有のスペクトル解析、鉱物組成
   OVIRS 可視赤外スペクトルメータ 鉱物や有機物解析
   REXIS X線イメージ分光 X線蛍光放射の測定ベンヌの元素分析 学生実験
  サンプル採取用として
   TAGSAM  タッチアンドゴーサンプル捕獲器
  オシリス・レックスの探査目的ははやぶさ2と同様であり
機器は鉱物種や有機物解析のためのものと、ほぼ同等の構成となっている。
ハヤブサ2と異なるのはかなり長期に地表探査を行うことで1年半を予定。
2018年8月にBennuへの接近を開始、2ヶ月かけ徐々に接近して並走軌道に。
その後1年以上並走しながら地表探査を行い、あわせてサンプル採取地点を選定。
採取は探査機本体を小惑星地表に接地させて行う。、
最大3回程度の窒素ガス噴射で表面物質を巻き上げ、同時にサンプル採取用アームを5秒間作動、
岩石などを採取するという方法で、60gから2キログラムのサンプルを得るという。
小惑星からの離脱は2021年3月、地球への帰還は2023年9月24日(ユタ砂漠へ)の予定である。
これら採取されたサンプルは原子レベルで化学組成の分析が行われ、
生命体の構成要素である有機物(アミノ酸や糖類)の探索がなされる。

○RyuguとBennu
  探査ターゲットとなったRyugu、Bennuは以下のような小惑星である.
*Ryugu
  直径    900m
  発見    1999年LINEAR(リンカーン研究所地球近傍小惑星探査)
  軌道傾斜  5.9度
  自転方向  逆行
  自転周期  7.6時間
  公転周期  474日
  平均距離  1.2AU
  分類型   C型
*Bennu
  直径    500m
  発見    1999年LINEAR
  軌道傾斜  6.0度
  自転方向  逆行
  自転周期  4.3時間
  公転周期  438日
  平均距離  1.1AU
  分類型   B型
  目的地に選ばれたRyuguとBennuは前者がC型、後者はB型となっている。
小惑星はそのスペクトルの特徴や隕石との関連(隕石は小惑星のかけら)から
大きく3つ、S型:岩石質か(隕石〜普通コンドライト)、M型:金属質か(鉄隕石)、
C型:炭素質か(炭素質コンドライト)に分けられる。
惑星の形成過程をイメージすれば分かると思うが、
原始惑星が一人前の惑星へと集積する過程で高温となり全体が溶融すると
重い金属は中心部に沈み、軽い岩石は表層に浮かんで来る。
と言うことは、金属質のM型、岩石質のS型小惑星はある程度分化が進んだものと言え、
これに比して炭素質のC型は水や原始的な有機物(炭素化合物)を含み、
元素組成が太陽と似通っていることから、より未分化で始原的なものと考えられている。
  そしてBennuのB型、これはC型を更に細分したもので、
温度の低い環境にいた、彗星のような天体がその母天体ではないかと考えられている。
  火星〜木星間にある小惑星帯(メインベルト)での各タイプの分布を見ると
上記のことがはっきりし、C型小惑星は主にメインベルト外側に位置し〜つまり
外側の温度の低い領域、S型はメインベルト内側〜温度の高い領域、
M型はメインベルト中央に多く存在するということがわかっている。
(このメインベルトのはるか外側、木星軌道付近にはC型よりさらに始原的な
P型、 D型と分類される小惑星もある)
  ところで、100万個以上と数ある小惑星の中で、なぜ今回の探査で
RyuguとBennuがターゲットとして選ばれたのか?答えは単純明快だ。
Bennuサイト(ハヤブサ2も)によれば、
その時に一番行きやすい所という理由で選んだということになる。
まず地球に近づく小惑星(Near earth Object 7000個以上)から、
離心率と軌道傾斜角が小さく行き来しやすい軌道を持ったもの(192個)で
引力が小さすぎず着陸に適したサイズで(直径200m以上、26個)
始原的なカーボンリッチなもの(5個)で、
最も行きやすいところという感じである。
○おわりに 
  さて、以上がハヤブサ2、オシリス・レックスの計画である。
小惑星は太陽系生成当時の姿をそのまま残す化石のような存在だ。
だが、太陽系の歴史を時系列を遡って見るためには、今回のC型小惑星探査に留まらず
さらに始原的と考えられるP型やD型といった小惑星の探査&サンプルリターンも、
外すわけにはいかないだろう。となるとはやぶさ2から、はやぶさ3、そして4へと
バージョンアップも・・と夢は広がるではないか。

 

・・・・火星大接近について(7月天文話から抜粋)・・・・

前回2003年の大接近は未曾有の大接近とややセンセーショナルにメディアで取り上げられ
日本各地の天文台では最接近当日には深夜まで見学者の長蛇の列ができた。
  火星は太陽の周りを2年弱(687日≒1.88年)で公転している。
そのため地球は、火星をほぼ2年毎(2年2ヶ月)に内側から追い越すことになるが、
この横並びとなるときに火星と地球の距離は最も近く、これを最接近と言っている。
(軌道の真上、極側から見るとその配置は太陽〜地球〜火星という並びとなる。
これを衝と呼ぶが、この衝の前後に最接近日が来ることになる。)
  ここで、火星軌道は楕円形をしているため、同じ横並びになるときでも、
軌道上のどこで横並びになるかによって最接近時の距離が大きく違う。
2つの軌道間隔が狭い箇所で接近するときが大接近、広い箇所で接近するときを小接近、
その中間での接近を中接近とし、大接近は15年か17年ごとに起こることになる。


○大接近・小接近
  火星と地球の軌道を較べて見ると
           火星       地球                  
  平均距離(〜太陽)2億2794万キロ   1億4960万キロ
           1.5237AU     1AU
  公転周期     686.98日     365.256日
  離心率e      0.0934      0.0167
  近日点黄経    336.0602     102.9373
  昇交点黄経    49.5658    0.0000

 まずは接近(横並び)の頻度だが、これは火星と地球の会合周期に他ならないので、
2天体の公転周期の差分から会合周期を求めると779.9日=2年と50日ほどとなり、
こうして2年2ヶ月毎に火星と地球は接近するということがわかる。
  次に大接近、小接近についてだが、火星の離心率は地球より6倍弱大きく、より扁平となっている。
近日点距離は1.3814AU=2億665万キロ、 遠日点距離は1.6660AU=2億4924万キロとなる。

ここで、地球軌道を円と看做せば(1.0AUとして)
近日点での地球〜火星間距離は0.3814AU≒5700万キロ、

遠日点では0.6660AU≒1億キロとなり
大接近と小接近ではほぼ2倍近くも大きさが違って見えるということになる。

 

○大接近の間隔
  地球の公転周期は365.256日。火星は686.98日。そして会合周期は779.9日。この3つから

地球   365.256×15周=5478.84
火星   686.98×08周 =5495.84
会合周期 779.9×07周 =5459.3

地球   365.256×17周=6209.352
火星   686.98×09周 =6182.82
会合周期 779.9×08周 =6239.2

と、15年・17年ごとに3つが同じような値となり、これが大接近の間隔となる。


○大接近を較べる
今回あわせ前後3回の大接近の数字を比べてみよう。

 2003年大接近 最接近日  8月27日   
         最接近距離 5576万キロ
         視直径   25.03秒
  2018年大接近 最接近日  7月31日
         最接近距離 5759万キロ   
         視直径   24,3秒
  2035年大接近 最接近日  9月11日
         最接近距離 5691万キロ
         視直径   24.6秒

最接近距離は、今回は2003年に較べ183万キロ遠い。次回も同様に115万キロ遠い。
2003年レベルの大接近となるのは、2208年(5577万キロ)
  ところで、どんな条件のときの大接近がいいのか?
これは当然、火星が近日点を通過するときに最接近するという場合だろう。
火星の近日点黄経(日心黄道座標)は336度ほどとなっている。
これは星座ではみずがめ座の方向となり、8月末の真夜中ごろに南中する。
ということで、最接近となる日にちが8月末ごろというケースが好条件のときとなる。
前回2003年は最接近日8月27日、これとならぶ2208年大接近では最接近日は8月24日、
また2003年よりさらに好条件の2287年の大接近も8月29日というようになっていて、
8月末に最接近となるときは、非常に条件のよい大接近の年と考えておけばよい。

 

○火星の季節
  火星の自転軸の傾きは25.49度と地球と大差なく、地球のような四季がある。
今回の接近時、火星の季節はどうなっているのだろう。
それを示すのがLs、火星基準の黄道座標で、Ls=0度が春分、90度が夏至、180度が秋分、270度が冬至である。
ここで、火星が近日点にいるときの黄経は336度ほどとなっていた。
この近日点に火星がいるときの(つまり最高条件での大接近のころ)Lsは251度となっている。
これは上記のとおり秋分と冬至の間、冬至寄りの位置で、北半球では秋の終わりから冬に向かう途上、
南半球では春の終わりから夏に向かうころにあたる。
  で、今回は最接近日が8月末ではなく7月31日なので、Lsは251度には達しておらず、
位置換算で大体221度付近となり、季節としてはちょうど秋分と冬至の間ということになっている。
また、このとき地球から見た火星の自転軸の視線方向の傾きはー11度と火星は上向きの状態。
つまり南極側をこちらに向け見せる格好となっている。
 
○最接近と火星の季節
  おしまいに補足。2年2ヵ月ごとの火星接近、このときの火星の季節は何か?
これは最接近の日さえ分かれば簡単に目安をつけることができる。
それは、地球と火星とが横並びとなったときの火星の季節は、
地球より一つ先に進んでいるという関係である。
ここで近日点に火星がいるときのLsは251度、このときの黄経は336度だった。
ここで火星からみた春分点、そして太陽から見た春分点はともにLs0、黄経0なので
両者の差85度は、火星から見た春分点と、太陽から見た春分点との角度のズレを表す。
(日心黄経ーLs=85)
つまり、日心黄道座標による春分点の位置は火星より85度大きく、
したがってLs 0、つまり火星が春分点に達した後、85度ぶんだけ動いた時点で地球が春分点に達し、
このとき火星の季節はほぼ夏至の時点となっている、したがって1シーズン先ということになる。