天文FAQ

天文トピックス

●最近話題の天文話 2018年10月

○再び月へ
  このところ月に関して何かと話題となることが多い。
9月半ばには、日本の某企業代表が月旅行の最初の切符を手にしたというニュースが報じられた。
内容は、米国宇宙企業「スペースX社」が計画している月への有人飛行に乗船するというもので、
2023年の飛行を目指しているという。月面への着陸はせず5日ほどかけて一往復するだけだが、
それでも月への有人飛行としてはアポロ以来およそ半世紀ぶりのこととなる。
ジュール・ベルヌのSF月世界旅行が、探査目的でない旅行として、現実のものとなるわけである。
と言っても費用は桁違いのようで、ふつうの「旅行」となるには更に半世紀はかかるだろう。
  年初には月面探査レースというものもあった。
日本からはHAKUTO(白兎)という探査車チームが参戦するということで期待されていたが
どのチームも期限に間に合わないということで、結局はレース自体が中止されてしまった。
  来年はアポロによる人類初の月面着陸50周年。内外で月が再び注目を集めている。
月周回宇宙ステーション建設、月の鉱物資源開発といった、月探査から一歩進んだ
火星探査など次のステップへの足掛かりとなるプランが出されている。
今回は、月をめぐる最近の話題についていくつかピックアップしてみよう。

 

○宇宙探査ロードマップ第3版(国際宇宙探査共同グループ)
  third edition of the Global Exploration Roadmap,January 2018
  ISECG( International Space Exploration Coordination Group) space agencies
  これからの宇宙開発をどのように進めるかについては議論が進められており
年初には日本も加わる国際宇宙探査共同グループによる上記のロードマップが公表されている。
(原文は英文、詳細は上記サイトを参照)
おおまかな方向性はだいたい次のようになる。

 ・2020年代/月へ  月周回軌道での探査  Deep Space Gateway
               ロボット(ローバー)による月面探査
              有人月面探査
  ・2030年代/火星へ 火星周回軌道での探査
                ロボットによるサンプルリターン
  ・2040年代/火星へ 有人火星地表探査

 と、2040年代の火星地表の有人探査を目指し、そこに必要とされる経験や技術の蓄積・開発など、
総合的な条件整備をしていくというような流れとなっている。
またロケットに関しては官製のものだけでなく民間と協力しての商業ロケットの実用化というものもあり
これからは宇宙探査が各国、企業入り混じっての一大プロジェクトとなる。
そしてそのとき月は、火星以遠、深宇宙にむけてのハブ的な役割を担う場所となっていくだろう。

 

○NASA〜月軌道プラットフォームゲートウエイ(Lunar Orbital Platform-Gateway,NASA)
  オバマ政権下メインターゲットとされてきた有人小惑星探査に替わり、
NASAが2017年末に打ち出してきたのがこの計画である。
現行の国際宇宙ステーションISSは2024年までの運用は決まっているが、その後は未定で、
維持費だけでも膨大な経費がかかることから国際的な流れとしては縮小の方向に向かうだろう、
ただし完全な廃止ではなく将来的には民間(商業)運用の移行案も出ているという。
それに替わる、そして最も重要なプロジェクトとなるのがこの月軌道の宇宙ステーション計画である。
トランプ大統領に替わり、そのトランプの後押し?(or NASAの意向?)もあってか
メインとして出てきたような話だが(アポロ50周年、70年代の強いアメリカを象徴→予算が取りやすい??)
宇宙探査の観点からは地球ではなく、重力の弱い月をベースにするほうがはるかに有利だ。
大気もなく(当然天候にも左右されない)より大型の探査機も打ち上げられるなど利点が多い。
そして、月ベース化の前提として月の水(氷)や鉱物資源探査、月面基地候補地の探索など、
月軌道上の宇宙ステーション計画は現行のISSが果たす役割をも包含するものとなる。
  NASAのアナウンスによれば、月輸送のための商用ロケットとロボット(自動操縦)離着陸船を整備し、
広く民間企業の月ビジネスへの参画を推進していくという。離着陸船は当初は500kgから1トン程度まで
搭載できる小型車ほどのものだが、最終的には5〜6トンの搭載能力を持つ大型の有人離着陸船を開発、、
大規模な月の資源探査や資源開発に利用できるものとするとのこと。
これら商用ミッションの最初の計画は2022年を目途にスタートし、2033年まで順次拡張される予定。
また、この月軌道宇宙ステーションは月の探査だけでなく、NASAの有人火星探査機
(Deep Space Transport)の中継地としても利用されるという。

 

○JAXA〜小型月着陸実証機(SLIM: Smart Lander for Investigating Moon)
  昨年11月末、日本も前記NASAのDeep Space Transport gateway計画に参画する見込み
という報道が流れた。ロシアほか多くの国も加わるということでもあり、これは自然の流れだろう。
  月探査に向けて、日本の独自の取り組みとしてあげられるのが小型月着陸機SLIMである。
当初2020年の打ち上げを目指していたが今年8月に計画の一部見直しがされ、
2021年にH-IIAロケットで、新しいX線観測衛星XRISMと相乗りで打ち上げられることとなった。
SLIMは本体重量200sと小型で、航法カメラにより目標地点に100m以内の精度で着陸できるという。
なお、着陸地点は現時点で「神酒の海」〜月のウサギ模様の片耳の領域〜とされている。
JAXAは、このSLIMの結果をもとに2030年には月へ有人着陸船を送り込む予定だ。
・・・この記事を書いている9月26日、日本の宇宙ベンチャー企業アイスペース(ispace)が
2021年半ばに無人探査機を月面に着陸させるという計画を発表、
2020年半ばにまず月の周回軌道にのせ機能確認、その後の別の着陸機を下すという。
(プロジェクト名HAKUTO-R。ispaceは前記した月面探査レースHAKUTOチームの運営会社)
〜打ち上げは米スペースX社の商業ロケット。やはりHUロケットよりは費用が安い??
着陸機は重量1.4トン、高さ幅とも大体4m、HUに十分乗る重さだが月までとなると改造が必要だろう〜

 

○中国〜嫦娥
  以上のように月への関心が高まっている昨今、ほかにも月関連の話題がいくつも・・・。
インドのチャンドラヤーンは、その観測データを使って月の水(氷)の存在が確かめられたということで
つい先日話題となったのは記憶に新しい。
また欧州宇宙局(ESA)は、以前ムーンビレッジという月基地建設と探査計画をアナウンスしたということだが
その後の状況は不明である。
そんな中、注目すべきは中国。2013年「嫦娥三号」が月面着陸に成功。無人探査車による探査も行った。
今年2018年末には「嫦娥四号」の打ち上げを予定している。ユニークなのはその着陸予定地点。
月の裏側への着陸を目指す。成功すれば世界初となる。月の裏側は表側に比べクレータだらけ、
起伏が大きく地殻も厚いなど表側とは大きく異なる様子を見せている。直接探査の意義は大で成功を期待したい。