応用 黒点スケッチ

 黒点が少ない場合は問題ないが、活動期の観測では判断に困る事例に直面する場合がある。

第1が、その観測対象が黒点か否かということ、第2が群の分けかたである。

気流状態が良いとき、太陽面には淡い暗点が多数見える時があり、微小黒点かどうかの判定に迷う

ということもある。特に迷うのが群わけと黒点型で、活動期には複数の黒点が隣接して現れ

その境界がはっきりしないということもある。以下、判定のための一例として見ていこう。

◎事例 黒点とするにはコントラストが低く微小な暗点

     (粒状斑境界で周囲より暗めの暗点と見えるものもあるが通常は短命)

 判定要素

  1/コントラスト 黒点の半暗部と比べて淡いかどうか  

  2/寿命     10分以上見えているかどうか

  3/サイズ    粒状斑サイズかどうか

  4/極性     双極性を示すような配置になっているかどうか

  5/活動領域  活動領域にあるのか、単独で存在するのか

 ○コントラスト→通常は黒点数のカウントの仕方に準じる。

  かって半暗部もカウントする数え方があったが、今は暗部のみカウントという数え方が主。

  そこで半暗部だけのものと見做し黒点とはしない。

  また微小な暗点は最初は見えていても観測終了時に消えているということも多い。

 ○寿命→数時間間をおいて再観測してみる。

  黒点の寿命は短命のものでは1日、ふつうは数日から数週間程度のものが多い。

  粒状斑境界は周囲より暗くなるが粒状斑の平均的寿命は7〜8分程度。

  →川口の場合 1日後も同位置に見えていれば黒点としている。

            以前に同位置に黒点があった場合は、群の再発と見做して黒点としている。

            太陽観測衛星などの磁場画像も参照、磁場強度、極性も確認

            また、拡大像で観測、領域の詳細を見る。単独か複数か、双極性が見られるか

            活動領域にあるか否か、領域が成長フェーズにあるかどうかなど

            上記のコントラスト、寿命にあわせ、全体として判断する。

◎事例 多数の黒点が連なって現れ、領域が接近し隣接する群との区分けができない

 判定要素

  1/黒点型 チューリッヒ分類 国際的にも広く使われており、これを基本とする。

    黒点型(チューリッヒ分類/ワルドマイヤー)

 (ワルドマイヤー チューリッヒ分類図から抜粋)      

      →川口では、マッキントッシュ分類を使っている。これはチューリッヒ分類の黒点型に加え、

       群中の主黒点の大きさや形状、群の集中度の3つの要素から群を分類したものである。

       やや煩雑だが黒点群の活動度、成長あるいは縮退フェーズにあるのかなどを一体で

       見ることができるのが利点である。

マッキントッシュ分類図 (国立天文台資料から抜粋)

  2/黒点群の活動度 

       同じ黒点型の群であってもそれが成長フェーズかまたは衰退フェーズにあるのか、

       その傾向を知ることは、群わけの一助となる。→マッキントッシュ分類

  3/黒点活動に見られる一般的な傾向

       大半の黒点群は東西に広がる。南北に並ぶ黒点はそれが隣接していても通常は別群と考える。

       しかし、中には群の傾きが大きく、極性が反転しているような群もあり、それらは1群とする。

       一般に発生したばかりの黒点は、この傾きが大きい傾向が見られる。

       双極黒点は赤道に対して傾きを持つことが多く、先行黒点の方が赤道に近く、後続黒点は少し

       離れる傾向がある。

       黒点の多く発生する中緯度ではその傾きは10度弱だが、一般に低緯度の群では小さく

       高緯度になるに従って大きくなることや、B型群など未発達の群では大きく、D型・E型では

       小さいことなどの傾向もある。

       黒点には固有運動がある。特に黒点の成長の始め数日間の固有運動は大きく、

       先行黒点側で経度方向に0.5度/日ぐらいの値が観測されることもある。

       これに比べ緯度方向の固有運動は少なく、また後続黒点側の固有運動も一般的に少ない傾向に

       あるとも言われている。

  4/磁場 磁場画像(SDOほか)を参照し領域の磁場極性を参考に

       黒点は通常NSの極性を持ちペアで現れることが多い。先行黒点、後続黒点に注目すると

       南半球のと北半球の群では極性がちょうど逆の配位となる。

  →川口の場合 複数の黒点が連なって現れるなど境界が判然としないようなとき、上記1〜4をすべて

            みながら群わけを行う。まず、群の東西の広がりに着目。通常15度内外という点から

            黒点型と合わせ、大きく広がった活動領域にある同群、または隣接した別群とする。

            このとき個々の黒点の極性も見ておlく。磁場構造がペアになっているか、または

            NS入り組んでいるかを見、後者の場合は東西の広がりが多少大きくても同群と

            判定することが多い。ただし、この領域が前後の期間にも活動的であるか否かも

            加味し判定を行う。

            さらに領域の寿命に着目、何度か回帰するような長寿命の黒点群は徐々に東西の

            広がりが増すのでこの場合も東西15度にはとらわれず見るようにする。

            南北方向の隣接に関しては別群と判定するケースが多い。ただし、その領域が

            活動的で磁場が入り組んでいる場合は磁場構造多極型(またはデルタ型)と

            判断し1群とする場合もある。

            また、極小時期、低緯度群の中には日が経つにつれ赤道を横切り反対側に移って

            しまうようなものがある。群わけとはややニュアンスを異とするが

            NSどちらの群に入れるかがは群の極性を見て判断する。 

 

 ○サンプル 巨大黒点群NOAA5395