記録集

記録

○天文現象&観測

●1989年8月16日白色光フレア観測記録

1989年08月16日01h02mUT、旧館天文台15cm屈折望遠鏡での黒点ルーチン観測終了間際、
太陽投影板に映る太陽像の端に明るく輝く点があるのが目に止まった。
ドームスリットからの迷光は時にあることなので反射的に迷光?と思い見直すとそうではない。
明らかに西側のリムが輝いている。
即座に白色光フレアと判断、研究室に下り国立天文台太陽物理部(当時)に通報、確認観測を依頼した。
白色光フレアの継続時間は数分ほどと認識していたため猶予はない、以降は時間との勝負になる。
観測室に急行し接眼部を写真撮影装置と交換、露光時間を1/2秒~1/250(適正露光)秒と
順次替えながら撮影。フレア終了後、データバック(NIKON)時計の較正を行い、
その後はHα単色光観測へ切り替え撮影、ポストフレアループを確認した。

撮影機材 ニコンF3(データバック装着)+太陽減光装置+Y2シャープカットフィルター 
フィルム 白色光=ミニコピー(ISO6設定、D19、20℃6分現像)
Hα単色像=テクニカルパンSO115(D19、20℃6分現像
観測領域 NOAA5629(2789/川口における群番号)。
フレア    2N/X20フレア 00h58mUT開始~01h07mMAX~02h16mEND

図1(上) 8月16日スケッチから

図1(上) 8月16日スケッチから
スケッチ観測終了0h58mUT、 フレア開始とほぼ同時刻。 観測は30分ほど前からであり 終了まで異変は感じられず。
フレアはHα観測に移る間に 始まったと考えられる。 輝点に気づいたのはフレアの 開始から4分後の1h02m。
1h22mフレア継続中、 1h42m 太陽西縁中空に浮かぶ淡いBright matter確認。 ここまでは白色光観測。
スケッチ観測ではフレア群は西縁に接した状況だったため確認できず記録はない。
写真観測による拡大画像には 記録されている(分解能1秒以下~半暗部微細構造解像)。
図2 8月14日スケッチから 左のH型群がフレア発生前の NOAA5629、磁場構造 δ型

図2 8月14日スケッチから 左のH型群がフレア発生前の NOAA5629、磁場構造 δ型
○白色光フレア


図3 白色光観測 ピークは過ぎたが光球に輝点。フレアループの根元?右黒点は2793(川口での群番)
図3 白色光観測 ピークは過ぎたが光球に輝点。フレアループの根元?右黒点は2793(川口での群番)

図4 白色光観測 オーバー露光をかけて撮像した上昇中のフレアループ
図4 白色光観測 オーバー露光をかけて撮像した上昇中のフレアループ
図4 白色光観測 オーバー露光をかけて撮像した上昇中のフレアループ


図5 Hα観測 03h16m ループプロミネンス
図5 Hα観測 03h16m ループプロミネンス

○サイクル24太陽活動は近年類を見ないほど低調であったが、太陽活動が非常に活動的な時には図2のようなNS極が
入り混じる磁場構造を持ったデルタ型群などが現れX10~X20といった大フレアを起こすことがある。
このような時には稀に白色光でもフレアが観測されることがあるので、特にデルタ型など複雑な磁場構造を持つ群が現れた時は
要注意である。川口での白色光フレアの検出は、旧館天文台での観測期間通じ、このほぼ50年間ほどの期間ただ1度のみである。
~他1回の白色光フレアが国立天文台で記録されている。~

●2004年6月8日金星の太陽面通過

2004年6月8日、日本で見られるのは130年ぶりという珍しい金星の太陽面通過が観測された。
これは太陽の前を金星が通過するという現象でいわば日食と同じ現象である。
この日の空は朝から全天厚い雲に覆われ観測は絶望視されたが、
ほんのわずか通過した雲の切れ間を通し科学館天文台で撮影したのが以下の記録である。
(次回の現象は2012年)
なお、次の連続写真は旭川の阿久津氏によるもの。金星食の進行の様子がよくわかる。
金星食の進行の様子
以上、旭川 阿久津氏による
●川口での記録 雲の切れ間からの観測
●川口での記録 雲の切れ間からの観測
太陽のふちから入り始めた金星。
太陽のふちから入り始めた金星。
金星が太陽のふちに接するとき、ブラックドロップ現象が見られるかもと期待したが雲に入ってしまい観測不能。
金星が太陽のふちに接するとき、ブラックドロップ現象が見られるかもと期待したが雲に入ってしまい観測不能。
好天に恵まれず、ほんのわずかの時間、雲間からという状況ではあるが
*観測会は何とか成功、金星を見られた子ども達は大喜び。
*科学館のライブ配信はアクセスがたくさんあってパンクしていた。
*望遠鏡がなくても肉眼で金星が太陽面にあることが分かった。視力の弱いヒトにはきつい。
*金星が太陽に接するときを高解像度撮影する予定だったが、雲に阻まれ失敗
 ●金星太陽面通過の前後
●金星太陽面通過の前後
●金星太陽面通過の前後
これは太陽面通過(内合)前後の金星で、まるで三日月のように見える。
月と違うことは上下側でずいぶんと長く光った部分が伸びていること。金星には厚い大気があるためこのように見える。
○2012年金星太陽面通過
 上の観測から8年後の2012年に、金星の太陽面通過があった。この日、関東地方は朝から厚い雲に覆われ
川口ではまったく観測することができなかった。次の画像は北に位置する大宮でほんの一瞬垣間見えた太陽の様子。
金星は右手上方の黒い点
金星は右手上方の黒い点

●2011年12月10日 皆既月食

月食は日食と違い、その時に月が見える場所ならどこでも月食を見ることができ、またどの場所でも同時に始まり
同時に終わるため(原理を考えれば当然のこと)観測がしやすい。この12月の皆既月食は冬の透明度が非常によく
また月の南中時の高度が季節の中でも最も高くなる時期なので好条件の月食だった。
2011年12月10日 皆既月食進行の様子(400mm望遠レンズで撮影)
2011年12月10日 皆既月食進行の様子(400mm望遠レンズで撮影)
欠け始めた月
欠け始めた月
皆既前から、月の影側が赤黒くなっている
皆既前から、月の影側が赤黒くなっている
皆既月食中の月
皆既月食中の月
皆既中の月が赤く見えるのは夕焼けと同じ現象。太陽光が地球大気中を長く通り抜ける過程で青い色の光が散乱し
赤い色の光だけが通り抜けるため月が赤く照らされる。月が地球の影の中心を通ると、もっと暗赤色に見える。
2018年1月31日の皆既月食中の月 コンパクトデジカメで撮影したもの
2018年1月31日の皆既月食中の月 コンパクトデジカメで撮影したもの

●2012年5月21日 金環日食

日本各地、そして川口でも見ることができるということで前々から期待されていた金環日食。
観測用の日食メガネが飛ぶように売れたという。平日なので科学館の天文台では金環日食のインターネット中継を計画。
雲が出たものの何とか天気に恵まれ観測をすることができた。
2012年5月21日 金環日食の進行写真(合成画像)
2012年5月21日 金環日食の進行写真(合成画像) 
大きく欠けてきた太陽 間もなく金環。非常に雲が多く、何度も見えなくなる
大きく欠けてきた太陽 間もなく金環。非常に雲が多く、何度も見えなくなる
ピンホール写真 太陽の影が深く欠けている
ピンホール写真 太陽の影が深く欠けている
リングになった太陽(天文台10cm屈折直焦点にて撮影(薄雲を通して)
リングになった太陽(天文台10cm屈折直焦点にて撮影(薄雲を通して)
コンパクトデジカメで撮った金環中の太陽  5分間のリング
コンパクトデジカメで撮った金環中の太陽  5分間のリング
これだけ好条件の金環日食が関東地方で見られるのはまれなのだが、前夜のこの日の天気予報は曇りと最悪。
天気がはっきりしない、そして早朝からの日食ということで、天文スタッフの何人かは夜から泊まり込みで観測とネット中継の準備。
雲が多く、観測は何度も中断を余儀なくされたが幸いにしてターゲットは太陽、薄雲を貫いて顔を出してくれた。
金環日食なので皆既日食のようにはもちろん暗くはならないが、日差しが少し弱くなったというのだけは感じられた。
平日だったので子供たちは学校だったが、みな日食メガネを準備し合間合間に見ることができたという。 祝!!
次に関東地方でも見られる皆既日食は2035年9月2日、川口は皆既帯から外れているので皆既日食を見ようという場合は
宇都宮、水戸などまで足を延ばす必要がある。本州で見られる皆既日食としては約150年ぶりとなる現象だ。

○学会

●学会・研究会などにおける発表等記録

科学館の持つ3機能、資料収集・調査研究・教育普及活動の一環として下記のような活動を行っている。
太陽望遠鏡による観測データ等はHP上で公開、このほか年報により太陽活動の状況などの解説も行っている。
2005年2月1日(火) 合同ユーザーズミーティング太陽地上光学観測の新展開2005 (明星大学日野キャンパス)

「川口市立科学館6連式太陽望遠鏡の運用および飛騨天文台におけるフィルター検定
および乗鞍コロナ観測所におけるHeI10830Å線の観測について」
口頭発表 (鈴木)
2005年3月29日(火) 日本天文学会2007年春季年会 (明星大学日野キャンパス)

「HeI 10830Åにおける活動現象の観測」
口頭発表 (鈴木)
2006年2月8日(水) Solar-Bと地上太陽観測の連携-太陽研究の新展開に向けて- (京大会館)

「光学フィルターの精密検定」
口頭発表 (鈴木)
2007年2月20日(火) 太陽高分解能観測と宇宙天気研究の新展開2007 (独立行政法人情報通信研究機構)

「He10830Åにおけるリムプロミネンスの分光観測報告について」
口頭発表 (鈴木)

2007年3月29日(木)

日本天文学会2007年春季年会 (東海大学)

「HeⅠλ10830Å線におけるプロミネンス吸収線比の測定」
口頭発表 (鈴木)
天文台