◎太陽投影板を使った黒点のスケッチ観測1・2・3

スケッチ観測の概要については天文の部屋/天文資料集/太陽黒点スケッチ法の解説 を参照

1.準備

  観測用紙/プリンタ用紙・中厚手上質紙(中性紙)などある程度腰のある用紙を用いる

          →耐候性・耐光性のある長期保存に適したもの

        /投影像と同サイズの円と、その中心点を記入

          →投影像直径は15cm以上、投影板が許す限りの最大サイズにする

            黒点位置の記録精度がよくなる。川口の投影像は24cm径。

          →任意 投影像の1/2サイズの円(太陽中心領域の黒点カウントのため)

            地球側に向いた方が受ける影響が大きいというような見方からの手法。

       /筆記具 鉛筆(2H〜などやや硬めのもの)

         →スケッチ用紙を不用意に汚さないため 

2.観測

  観測項目/黒点(黒点半暗部、暗部)。白斑(赤鉛筆などで黒点と識別がつくように)

         群中のすべての小黒点数のカウント、東西方位出し、観測時刻、

  スケッチ/描画の方法は任意。川口では半暗部は輪郭のみ、暗部は黒ベタ

         →半暗部未発達の小黒点など、半暗部の有無が明示できる(黒点型決定に重要)

3.まとめ

  相対数表/南北半球ごとの黒点群数、小黒点個数、黒点相対数R、R月平均値、備考

         →任意 太陽中心領域の南北半球ごとの黒点群数、小黒点個数、R

  黒点群表/群番号。国際標準との比較が容易になるようNOAAナンバーも併記する

         群ごとの、経緯度、黒点型・黒点数の発生から消滅までの全経緯

         →経緯度は黒点の最大規模の値を表示

         →群の一生を明示。回帰群の判定も行う

3−2.年または数年以上のまとめ

  黒点相対数グラフ/13か月移動平均値(ある月を中心に前後6か月分を合算しての平均値)

              例   1 2 3 4 5 6 7 6 5 4 3 2 1 (1+・・+7+・+1)/13=中心値 約3.7・

  蝶型図/黒点出現緯度の時系列変化図

 

◎関連事項解説

○群分類の方法

 活動期の太陽面には多くの群が現れ、群の判断に迷う場合がある。

第1が、見ているものが黒点か否かということ、第2が群の分けかたである。

気流状態が良いとき、太陽面には粒状斑と同時に淡い暗点が多数見え、

それが微小黒点かどうかの判定に迷うような場合がある。

また、複数の黒点が隣接して現れ、境界がはっきりしないこともある。

 

事例 黒点とするにはコントラストが低く微小な暗点

     (粒状斑境界で周囲より暗めの暗点と見えるものもあるが通常は短命)

 判定のポイント

  1/コントラスト 黒点の半暗部と比べて淡いかどうか  

  2/寿命     10分以上見えているかどうか

  3/サイズ    粒状斑サイズかどうか

  4/極性     双極性を示すような配置になっているかどうか

  5/活動領域  活動領域にあるのか、単独で存在するのか

 1 コントラスト→通常は黒点数のカウントの仕方に準じる。

  かって半暗部もカウントする数え方があったが、今は暗部のみカウントという数え方が主。

  そこで半暗部だけのものと見做し黒点とはしない。

  また微小な暗点は最初は見えていても観測終了時に消えているということも多い。

 2 寿命→数時間間をおいて再観測してみる。

  黒点の寿命は短命のものでは1日、ふつうは数日から数週間程度のものが多い。

  粒状斑境界は周囲より暗くなるが粒状斑の平均的寿命は7〜8分程度。

  →川口の場合 1日後も同位置に見えていれば黒点としている。

            以前に同位置に黒点があった場合は、群の再発と見做して黒点としている。

            太陽観測衛星などの磁場画像も参照、磁場強度、極性も確認

            また、拡大像で観測、領域の詳細を見る。単独か複数か、双極性が見られるか

            活動領域にあるか否か、領域が成長フェーズにあるかどうかなど

            上記のコントラスト、寿命にあわせ、全体として判断する。

事例 多数の黒点が連なって現れ、領域が接近し隣接する群との区分けができない

 判定のポイント

  1/黒点型 チューリッヒ分類 国際的にも広く使われており、これを基本とする。

    黒点型(チューリッヒ分類/ワルドマイヤー)

 (ワルドマイヤー チューリッヒ分類図から抜粋)      

      →川口では、マッキントッシュ分類を使っている。これはチューリッヒ分類の黒点型に加え、

       群中の主黒点の大きさや形状、群の集中度の3つの要素から群を分類したものである。

       やや煩雑だが黒点群の活動度、成長あるいは縮退フェーズにあるのかなどを一体で

       見ることができるのが利点である。

マッキントッシュ分類図 (国立天文台資料から抜粋)

  2/黒点群の活動度 

       同じ黒点型の群であってもそれが成長フェーズかまたは衰退フェーズにあるのか、

       その傾向を知ることは、群わけの一助となる。→マッキントッシュ分類

  3/黒点活動に見られる一般的な傾向

       大半の黒点群は東西に広がる。南北に並ぶ黒点はそれが隣接していても通常は別群と考える。

       しかし、中には群の傾きが大きく、極性が反転しているような群もあり、それらは1群とする。

       一般に発生したばかりの黒点は、この傾きが大きい傾向が見られる。

       双極黒点は赤道に対して傾きを持つことが多く、先行黒点の方が赤道に近く、後続黒点は少し

       離れる傾向がある。

       黒点の多く発生する中緯度ではその傾きは10度弱だが、一般に低緯度の群では小さく

       高緯度になるに従って大きくなることや、B型群など未発達の群では大きく、D型・E型では

       小さいことなどの傾向もある。

       黒点には固有運動がある。特に黒点の成長の始め数日間の固有運動は大きく、

       先行黒点側で経度方向に0.5度/日ぐらいの値が観測されることもある。

       これに比べ緯度方向の固有運動は少なく、また後続黒点側の固有運動も一般的に少ない傾向に

       あるとも言われている。

  4/磁場 磁場画像(SDOほか)を参照し領域の磁場極性を参考に

       黒点は通常NSの極性を持ちペアで現れることが多い。先行黒点、後続黒点に注目すると

       南半球のと北半球の群では極性がちょうど逆の配位となる。

  →川口の場合 複数の黒点が連なって現れるなど境界が判然としないようなとき、上記1〜4をすべて

            みながら群わけを行う。まず、群の東西の広がりに着目。通常15度内外という点から

            黒点型と合わせ、大きく広がった活動領域にある同群、または隣接した別群とする。

            このとき個々の黒点の極性も見ておlく。磁場構造がペアになっているか、または

            NS入り組んでいるかを見、後者の場合は東西の広がりが多少大きくても同群と

            判定することが多い。ただし、この領域が前後の期間にも活動的であるか否かも

            加味し判定を行う。

            さらに領域の寿命に着目、何度か回帰するような長寿命の黒点群は徐々に東西の

            広がりが増すのでこの場合も東西15度にはとらわれず見るようにする。

            南北方向の隣接に関しては別群と判定するケースが多い。ただし、その領域が

            活動的で磁場が入り組んでいる場合は磁場構造多極型(またはデルタ型)と

            判断し1群とする場合もある。

            また、極小時期、低緯度群の中には日が経つにつれ赤道を横切り反対側に移って

            しまうようなものがある。群わけとはややニュアンスを異とするが

            NSどちらの群に入れるかがは群の極性を見て判断する。 

 

 ○サンプル 巨大黒点群NOAA5395